中国に学べ
我々東京税理士会国際部の訪中団が中国税務諮詢協会を訪問したのは平成13年11月23日。雲一つ無い澄みきった青空の割に日中最高気温が4℃という極寒の日で、時刻は確か午後2時頃であったと記憶しています。
訪問の際一人一人に配付された「中国注冊税務師資格制度」と題されたパンフレット中に、中国語による次のような記載がありました。
「目前、全国統一考試己挙行四次、有26万他人報考、48,682人取得注冊税務師執業資格…」
原文は中国の略した漢字、いわゆる「簡化字」で記されているのでこの通りではありませんが、日本の漢字に置き換えるとこうなります。その意味は、現在(2001年)まで4回試験が行われ、延べ26万人を超える受験者があったが、このうち48,682人が合格し注冊税務師資格を取得したという内容です。つまり我々が訪れた11月には今年の統計値が出ていた訳です。
このパンフレットの発行時期は2001年10月と記載されています。国家試験が行われるのは毎年6月ですから、パンフレット発行半月前に原稿が出揃っていなければならない印刷の事情などを考慮すると、少なくとも9月中旬迄には試験結果の発表があった計算になります。これは驚くべき事で、中国の国土の広さと受験人口を考え合わせれば、日本とは比較にならない程のスピーディーな採点処理が行われていると言わねばなりません。
中国における注冊税務師制度の構築には、日本の税理士制度をベースにしたとの発言もありましたが、そのまま導入するのではなく、良いところは真似、日本で問題の起きている部分は排除又は改善したうえで制度化されているとの印象を受けました。この試験から発表までの時間の速さもその一つでしょう。
良いところを取り入れたと思われるのは科目合格制を一部導入している事ですが、科目合格の効果は2年と短い期間に制限されていて、2年間に5科目達成した時点で合格という厳しいものです。私が中国に生まれていたならば、おそらく未だに受験生です。
日本の制度より改善されていると感じた点を挙げてみます。
① 資格更新のルールが定められていること
② 他の資格から無試験では参入できない制度になっていること,役所の職籍や年数では資格取得出来ないこと,学位による免除は無いこと
③ 注冊税務師事務所は最初から必ず法人でなければならないこと
④ 会計士との職域が日本より明確に分かれていること
まだありますが、いずれにしても曖昧模糊とした日本人である私の目からみて、非常にクリアで分かり易い制度になっていると強く感じた次第です。
北京の空は今日もきっと、あの時のように青く澄み渡っていることでしょう。
(青木 優幸 記)