HOME 税理士の方へ 国際部レポート 2001年 中国視察報告書 Ⅳ.中国国家税務総局国際税務司訪問

Ⅳ.中国国家税務総局国際税務司訪問

1.はじめに

平成13年11月23日中国国家税務総局を訪問した。玄関は金色に輝き1階ロビーは大理石で吹き抜けという一流ホテル並の国家税務総局の建物の中で、午前10時より12時までの2時間にわたり、国家税務総局国際税務司司長の張志勇氏、副処長の姜莉氏、外事処処長の兪書春氏の出席をいただき、中国のWTO加盟後の中国税制の動向や現行税制の内容について、質疑応答を交えながら説明を受けた。

2.国家税務総局国際税務司の概要

国家税務総局は、中国の税務申告の取扱い及び法律の草案を作成する国家機関であり、日本の国税庁に相当する。約20の部門があり、国際税務司はその中の一つの部門である。国際税務司は、外資系企業及び外国人の税務政策や執行、さらに、中国政府と外国政府との間の国際税務条約の契約締結なども担当している。また、国家税務総局の対外の窓口としての役割もある。

3.WTO加盟後の税制改革について

中国は、2001年11月10日のWTOの閣僚会議において加盟が承認され、1カ月後の  12月11日に正式盟した。WTOに加盟した場合、内外無差別原則により、現在中国が採用している外資系企業に対する各種優遇政策については、将来見直されなければならない。現在税制改正のスケジュールは、具体的には決まっていないが、ただ、現在有効な優遇政策、たとえば2免3減(経営期間が10年以上の外資系企業は、利益が上がり始めた年後の1年目と2年目は、企業所得税が全額控除、3年目から5年目は半額控除という制度)の制度は、新しい法律が公布されるまで継続する。新しい法律ができても、一定の猶予期間が決まるため、近い将来に廃止されることは無い。また、中国は科学技術の面では先進国より遅れているため、高度新技術企業と認定された外国の投資企業に対しては、優遇政策をそのまま継続する予定である。WTOの規則により、中国の今までの税務政策を調整する必要があるが、既に中国に投資している企業に対しては、大きな損失がでないように努力しているとのことである。
 WTO加盟後は、税務行政の面でも透明にしなければならないということから、公平、公正、公開という税務機関の行動を規範する考え方がでてきている。公平とは、税務政策上全ての納税者に、税務執行面でも公平でなければならないということであり、違う納税者に違う執行の方針をとってはならないということである。公正とは、法律に従って厳密に執行しなければならないということである。脱税や不正還付に対しての調査は優秀な納税者の保護でもある。公開とは税務政策や、法律、通達、改正点などを公布し、納税者によく説明しなければならないことである。このようにWTO加盟後は、伝統的な、税務機関は権力が強く、納税者は義務だけ、という考え方を直さなければならない。

4.輸出にかかる増値税の還付問題

1994年1月に公布された増値税(中国の増値税の税率は、原則として17%である)は、当初輸出品にかかる原材料等の仕入税額分は全額還付されることになっていたが、中央政府の資金不足等の理由により全く還付されず、外国企業のコスト負担となり国際的に大きな問題になっていた。増値税(付加価値税)は、輸出時の免税及び還付、輸入時の課税が国際慣行である。その後1995年2月に増値税還付が認められ、その後段階的に還付率が引き上げられ、1999年7月の平均還付率は、15%(機械・設備、電気及び電子製品、運輸工具、機械計器等は全額還付。)に達している。今までの中国の増値税は、税金を支払って輸出してからその後還付するというような方法をとっていたが、今後は輸出製品を免税にし、中国国内で販売する増値税と相殺し、それでも足りない場合に中央政府から還付するというような方法を採用しようとしている。

5.増値税と営業税の課税対象の区分について

流通税である増値税と営業税の区分は、全ての物品の販売と一部分の役務の提供に対しては増値税を課税し、増値税を課税しない役務の提供に対しては、営業税を課税する。具体的には、営業税を課税する税目は限定列挙されており、交通運輸業、建築業、金融保険業、郵便・通信業、文化・体育業、娯楽業、サービス業等であり、税率は主に売上高に対し3%から5%である。増値税の課税対象は、営業税の非課税対象とされ、営業税の課税対象は増値税の課税対象とされている。従って、一つの行為に対して増値税と営業税が同時に課税されることはない。
1994年に増値税及び営業税を導入した際には、将来、増値税の課税対象と営業税の課税対象を統一して、一つの増値税を課税しようという方針があった。しかし現在では税率及び課税対象が違い、増値税と営業税を統一した場合の納税者の税負担をどうするか、また国の税収も大きく変わることから、容易に改正することは難しい。
 役務の提供の場合、どのような役務の提供に対して増値税を課税するかあるいは営業税を課税するか、区分する規定や通達があっても納税者と税務機関で意見が一致しない複雑な場合がある。このような場合には、中国では増値税をおもな税収として課税している関係上、どうしても区分がわからない場合は増値税を課税する場合が多い。

6.相続税(遺産税)導入問題について

10年程前から中国では相続税の導入を考えていた。しかし、最近の方針では、相続税を徴収する条件がまだ整わないということから、すぐに導入する可能性は以前に比べ少なくなった。個人資産を把握する環境がまだ出来ていないことや、実際、固定資産等の財産を所有している人が少ないことが考えられる。

7.納税者の権利保護について

納税者が税務機関の決定に対して不服がある場合、その決定をした税務機関の上の税務機関(上級税務機関)に対して、不服申立ての申請ができる。もし納税者が上級税務機関の決定に対しても不服の場合には、裁判所に行政訴訟を起こすことができる。納税者の勝訴率は約6割となっている。
税務調査は、普通の場合は正式調査するところに事前通知を必ず行う。事前通知は、一般的には一週間前に行うが、最終的に、調査の日程は納税者との相談による。但し、犯罪が疑われるような場合は事前通知はしない。事前通知は、企業が税務機関に届け出てある仲介機構を経由して行われる。しかし税務代理事例がまだ少なく、企業自らが税務機関に登録しているのがほとんどのため、企業に直接事前通知をすることが多い。税務機関が調査に派遣する人員は、企業の規模により違うが一般的には3名から5名程度で、最低でも2名以上である。
時効は普通の場合は3年である。特別の事情がある場合、たとえば悪質な場合などは以前は10年だったが、2001年5月に改正された新しい税収徴収管理法は5年である。また特に犯罪の疑いがある場合には時効はない。

8.中国税制の概要

(1)企業所得税

中国政府は、外国企業の投資を奨励するため、外国投資企業に対して様々な優遇を与えているが、その中でも手厚い優遇措置が講じられているのが税制面である。企業所得税は、1991年7月に施行された「外国投資企業及び外国企業所得税法」に基づいて課税される。

①課税対象

a.外国投資企業(合弁、合作、100%外資)・・・・中国国内・国外に源泉のある所得
b.外国企業(中国国内に拠点のあるもの)・・・・中国国内に源泉のある所得

②税率

国税30%、地方税3%、合計33%

③優遇措置

国税部分については次の投資優遇措置がある。(地方所得税に関しては外国投資奨励の業種及びプロジェクトに対して省、自治区、直轄市の地方政府が減免税を決定するものとされているが、免税としている地方が多い。)

  1. 税率15%適用企業
    1. 経済特区に設立された外国投資企業
    2. 経済特区に設立された機構、場所で生産、経営に従事する外国企業
    3. 経済技術開発区に設立された生産型外国投資企業
    4. 沿海経済開放区、経済特区がある都市の旧市街区、経済技術開発区がある都市の旧市街地に設立された一定の奨励プロジェクトの生産型外国投資企業
    5. 国務院が規定した地区に設立された奨励プロジェクトの外国投資企業
      ※生産型外国投資企業とは次の業種の外国投資企業である。
      • 石油及び天然ガスの採掘を除くエネルギー産業
      • 冶金工業、化学工業及び建材工業
      • 軽工業、紡績工業及び包装工業
      • 医療器械工業及び製薬工業
      • 農業、林業、牧畜業、漁業及び水利業
      • 建設業
      • 交通運輸業(旅客輸送含まず)
      • 直接生産に寄与する科学技術開発、地質調査、生産用の情報コンサルティング及び生産設備並びに精密計測機器の保守修理業
      • 国家税務総局の決定を得たその他の業種
  2. 税率24%適用企業
    1. 沿海経済開放区の生産型外国投資企業
    2. 経済特区がある都市の旧市街区に設立された生産型外国投資企業
    3. 経済技術開発区がある都市の旧市街区に設立された生産型外国投資企業
  3. タックス・ホリデイ(期間減免税)
    1. 2年間免税3年間半滅経営期間10年以上の生産型外国投資企業は利益が上がり始めた年後(繰越欠損金控除後)の1年目と2年目は全額控除、3年目から5年目は半額控除
    2. 5年間免税5年間半額
      • 経営期間15年以上の港湾埠頭建設の合弁企業
      • 経営期間10年以上の海南経済特区に設立されたインフラ設備または農業の開発経営に従事する外国投資企業
      • 経営期間15年以上の上海浦東新区に設立されたインフラ設備に従事する外国投資企業
    3. 1年間免税2年間半滅
      • 経営期間10年以上の経済特区に設立されたサービス業に従事する外国投資企業で、外国投資が500万米ドル超のもの
      • 経営期間10年以上の経済特区及び国務院が認可した地域に設立された外国銀行支店及び外資系銀行等の金融機関で外国側の投下資本金または本店からの払い出し営業資金が1,000万米ドル超のもの
    4. 2年免税
      • 経営期間10年以上の高度新技術産業開発区で新技術企業として認定された外国投資企業
  4. 再投資における税の還付
    外国側投資者が、配当利益をその企業に再投資(増資)するか、または他の外国投資企業に出資し、その経営期間が5年以上である場合は、税務当局の許可を条件にその再投資部分の既納付額の40%が外国側投資者に直接還付される。また、再投資の対象が「製品輸出企業」か「先進技術企業」の新設または増資である場合、また、海南経済特区に設立された企業からの配当利益であって、かつ海南経済特区内のインフラ設備または農業開発に向けられる場合は、既納付額の全額が還付される。
④欠損金の控除

外国投資企業に欠損を生じた場合、5年間繰越しが可能。

⑤ 納税手続
  1. 納税年度
    1月1日から12月31日まで、但し外国企業については、税務当局の承認を得れば、自社の会計年度を納税年度とすることができる。
  2. 納税申告書
    事業年度終了後4カ月以内に納税申告書と会計決算報告書を提出する。会計決算報告書には中国で登録された公認会計士の監査報告書を添付する。
  3. 納税方法
    企業所得税の納付は、1年毎に計算し、四半期に分けて納税する。四半期終了後15日以内に予納し、年度終了後5カ月以内に一括精算する。四半期予納額は実際の利益額で予納してもよいし、前年度の課税所得額の1/4で予納することもできる。

(2)個人所得税

従来は外国人向けの所得税の体系と、中国国内の居住者向けの所得税の体系が別であり、そのために税負担の格差が生じていた。そこで1994年1月に個人所得税が大幅に改正され一本化された。また以前は全ての所得を合算して税額を算出していたものを、収入の種類に応じそれぞれ個別に税額を算出することとなった。

①課税所得の種類
  1. 賃金給与所得
  2. 個人工商業者生産経営所得・・・・工業、商業、手工業、建設業、交通運輸業等
  3. 企業、事業単位からの請負、リース経営による所得
  4. 役務報酬所得・・・・設計、内装、製図、医療、法律、会計、コンサルティング等
  5. 原稿報酬所得
  6. 特許権使用料所得
  7. 利子、配当所得
  8. 財産賃貸所得・・・・個人が建設物、土地使用権、機械設備、車両船舶、その他の財産を賃貸して取得する所得
  9. 財産譲渡所得・・・・個人が有価証券、出資持分権、建設物、土地使用権、機械設備、車両船舶その他の財産を譲渡して取得する所得
  10. 一時所得・・・・賞金、賞品、宝くじその他の一時的性質の所得
②課税所得の計算及び税率と税額計算

中国の個人所得税は一種の分離課税が採用されており、各所得は独立して計算され、それぞれの所得別に所得控除が行われ、所得別に異なった税率表が適用されて税額が計算される。日本のような各種の所得控除はない。

  1. 賃金給与所得  超過累進税率が適用される。

    (個人所得税税率表-1)
    課税所得額/月 税率(%) 速算控除額
    1 500元未満 5% 0元
    500元以上2,000元未満 10 % 25元
    2,000元以上5,000元未満 15% 125元
    5,000元以上20,000元未満 20% 375元
    20,000元以上40,000元未満 25% 1,375元
    40,000元以上60,000元未満 30% 3,375元
    60,000元以上80,000元未満 35% 6,375元
    80,000元以上100,000元未満 40% 10,375元
    100,000元以上 45% 15,375元

    (注)本表のいう課税所得/月は、毎月の収入総額から経費800元控除した残額を示す。外国人は外国人控除3,200元を加算し、4,000元が控除される。

  2. 個人工商業者生産経営所得及び請負、リース経営による所得

    個人所得税税率表-2
    (個人経営者の生産経営所得と企業・事業単位からの請負経営、リース経営の所得に適用する)
    課税所得額/月 税率(%) 速算控除額
    5,000元未満 5% 0元
    5,000元以上10,000元未満 10% 250元
    10,000元以上30,000元未満 20% 1,250元
    30,000元以上50,000元未満 30% 4,250元
    50,000元以上 35% 6,750元

    (注)本表でいう課税所得額/年は、本法第6条の規定に基づき、各納税年度の収入総額からコスト、必要経費及び損害額を差し引いた残額を指す。

    • 個人工商業者生産経営所得=収入総額-原価-費用-損失
    • 請負、リース経営による所得=収入総額-必要費用(月800元)
  3. 役務報酬所得、特許権使用料所得、財産賃貸所得  これらの所得は毎回の収入額について、次のとおり計算する。

    • 収入額が4,000元以下の場合 … (収入額-800元)×20%(税率)
    • 収入額が4,000元超の場合 … (収入額-収入額×20%)×20%(税率)

    毎回の収入額とは、次のとおり。
    役務報酬所得は、収入を取得した時を1回とし、同一項目の連続収入は1カ月以内に取得する収入を1回とする。特許権使用料所得は、ひとつの特許権の1度の使用を許諾して取得する収入を1回とする。財産賃貸所得は、1カ月以内に取得する収入を1回とする。

  4. 原稿料所得
    税率は20%であるが30%の税額控除があり次のように計算する。
    • 収入額が4,000元以下の場合 … (収入額-800元)×20%×(1-30%)
    • 収入額が4,000元超の場合 … (収入額-収入額×20%)×20%×(1-30%)

    毎回の出版、発表で取得する収入を1回とする。

  5. 財産譲渡所得
    財産を1回譲渡するごとに次のとおり計算する。
    (収入額-取得原価-財産売却時に規定により支払う関連費用)×20%(税率)
  6. 利子、配当所得、一時所得
    毎回の収入額を課税所得とする。
    毎回の収入額×20%
③税額の納付

納税年度は1月1日から12月31日までとされているが、各所得に対する納税義務は毎月行うべきものとされており、所得が発生した月の翌月7日が納税申告期限である。
個人所得税は所得者を納税義務者とし、所得を支払う者を源泉徴収義務者としているが、原則として源泉徴収制度が採用されており、2カ所以上で賃金給与所得を取得している場合、 または源泉徴収義務者がいない場合には申告納税制度が採用されている。

(3)増値税(加価値税)

1994年1月の税制改革の中でも、重要な位置を占めているのが流通税である。1993年末までは、中国企業に対して増値税、営業税、産品税、特別消費税、普通乗用車特別消費税が適用され、 外資系企業に対しては工商統一税等が適用されていたが、1993年12月にこれらの流通税は廃止され、1994年1月より中国企業、外資系企業を問わず全て新増値税、新営業税、新消費税が適用されることとなった。 外資系企業についていえば、工商統一税が新しい増値税と営業税に、特別消費税、普通乗用車特別消費税が消費税の新設によって吸収されたことになる。
増値税の課税対象は物品の販売と輸入及び加工・修理・組立修理の役務の提供とされており、加工・修理・組立修理以外の役務のほとんどは営業税の課税対象とされている。 増値税の課税対象は営業税の非課税対象とされ、営業税の課税対象は増値税の非課税対象とされている。従って、一つの行為に対して増値税と営業税が同時に課税されることはない。

①納税義務者

中国国内で物品の販売または加工・修理修繕の役務提供及び物品の輸入を行なう者。

②税率
(イ) 物品の国内販売、輸入 17%
(ロ) 加工、修理、組立修理の役務提供 17%
(ハ) 下記物品の販売、輸入
  • 穀物、食用植物油
  • 水道水、冷房用冷気、暖房用蒸気、熱水、石炭ガス、石油液化ガス(LPG)、天然ガス(LNG)、メタンガス、生活用石炭製品
  • 図書、新聞、雑誌
  • 飼料、科学肥料、農薬、農業機械、農業用プラスチックフィルム
  • 国務院か規定するその他物品
13%
③非課税項目
  • 営業税の課税役務は増値税の非課税役務となる。
  • 無形資産の譲渡、不動産と固定資産建設仮勘定の売却。
  • 従業員の雇用者に対する修理、加工、組立修理役務。
  • 企業以外の組織または個人経営者以外の個人の混合販売行為
④免税項目
  • 農業生産者が販売する自家生産の農産物
  • 避妊薬品と用具
  • 古図書
  • 直接科学研究・実験、教育に使用される輸入品及び設備
  • 外国政府・国際組織の無償援助による輸入物資と設備
  • 加工貿易と補償貿易用の輸入設備
  • 身体障害者組織が障害者専用に直接輸入する物品
  • 自己使用済み販売物品
  • その他個人の売上高で課税起算点に達しない場合(販売600-2,000元/月、役務提供200-800元/月)
⑤税額の計算
  1. 一般納税義務者
    売上高×税率-仕入に係る増値税
    (注)仕入税額として控除できないもの
    • 専用領収書に仕入れ税額の記載がないもの
    • 固定資産の購入に係る仕入税額
    • 非課税、免税項目に使用するもの
    • 公共の福祉または個人消費に使用するもの
    • 非正常損失に係る物品購入、棚卸資産購入等

    (注)納税期間内の売上税額が控除可能仕入税額より少ない場合には、控除できなかった仕入税額が次の納税期間に繰り越される。

  2. 小規模納税義務者
    売上高×6%
    ただし下記の小規模納税義務者は4%

    • 年間売上高が180万元以下の小規模商業企業
    • 受託販売店の委託販売商品の販売(個人の委託販売物品も含む)
    • 質屋業の質の販売
    • 中古品の販売
    • 国務院またはその授権機関が許可した免税品の小売販売

    ※年間売上高が工業で100万元以下、商業で180万元以下の者を小規模納税義務者という。小規模納税義務者でも、会計帳簿が健全で確実な税務資料が提出できる場合には税務局の承認を得て一般納税義務者となることができる。

  3. 輸入納税義務者
    (関税課税価格+関税+消費税)×税率
    ※納税者が物品を輸入する場合いかなる税額も控除できない。
⑥混合販売行為

増値税の課税対象である物品の販売行為と、営業税の課税対象である役務提供が物品の販売を通して同時に行われた場合を混合販売行為と称している。
この場合には、物品の販売を主として行ない営業税の課税役務の提供を従として行なう場合には物品の販売とみなされ増値税が課税され、逆に営業税の課税役務の提供を主として行ない物品の販売を従として行う場合には、営業税の課税役務とみなされ営業税が課税される。混合販売行為の課税対象区分は最終的に税務当局が決定する。
ただし、増値税の課税対象と営業税の課税対象を事業区分として明確にしている場合には、それぞれの事業区分に対して増値税または営業税が課税される。

⑦納付期限(納付税額により税務機関が決定)
  1. 課税対象期間が1カ月の場合
    期間満了日から10日以内に申告納付
  2. 課税対象期間が1日、3日、10日、15日の場合
    期間満了日から5日以内に予定納付、翌月1日から10日以内に申告納付し、前月の納付税額を精算。
  3. 物品輸入の場合
    税関が税額納付証を発行した日から7日以内に納付。

(4)営業税

役務に対する課税は基本的に営業税の課税行為であるが、増値税の課税行為とされているものは除く。また、営業税の課税行為であっても税率の異なる課税対象行為があり、売上が区分されていない場合には高い税率で一括して区分される。営業税は納税者が税負担する内税とされており、会計処理は売上高の控除項目とされ、納付すべき営業税は未払税金の内訳科目として未払営業税科目で処理する。

①納税義務者

中国国内でサービス業等の役務や、無形資産の譲渡または不動産販売を行う者。

②税目と税率
(営業税税目・税率表)
1.交通運輸業 陸上運輸、水上運輸、航空運輸、 パイプ運送、積み卸し運搬 3%
2.建設業 建築、据え付け、修繕、装飾、その他工事 3%
3.金融・保険業 5%
4.郵便・通信・通信業 3%
5.文化・体育業 3%
6.娯楽業 ダンスホール、カラオケ、音楽喫茶、ビリヤード、ゴルフ、ボーリング等 5-20%
7.サービス業 代理業、ホテル業、レジャー業、飲食業、倉庫業、賃貸業、広告業、その他サービス業 5%
8.無形資産譲渡 土地使用権譲渡、特許権、非特許技術権、商標権、著作権 5%
9.不動産販売 建築物及びその他土地付属物の販売 5%
③非課税項目
  • 増値税の修理、加工、組立修理役務は営業税の非課税役務となる
  • 従業員の雇用者に対する課税役務
  • 生産・卸売・小売を兼営する企業の混合販売行為
  • 企業的性格の組織または個人経営者の混合販売行為
  • 立法・司法・行政機関が直接徴収する公布基準による費用
④免税項目
  • 社会福祉施設が提供する福祉サービス
  • 医療施設が提供する医療サービス
  • 学校等の教育サービス、学生の勉学のために提供するサービス
  • 特定の農業牧畜業関連役務
  • 博物館、美術館の入場料収入
  • 宗教施設等の入場料収入
⑤税額の計算

営業売上高×税率
営業売上高とは、次のとおり。

  • 一般企業は、受領代金総額+手数料等
  • 運送企業は、運送総収入-国外下請先運賃
  • 観光企業は、観光総収入-国外下請先観光費用
  • 建設業は、請負総額-下請先代金
  • 貸出業務は、貸付利息収入-借入利息支出
  • 外貨等売買は、販売価格-仕入価格
⑥納付期限(納付税額により税務機関が決定)
  1. 課税対象期間が1カ月の場合
    期間満了日から10日以内に申告納付
  2. 課税対象期間が5日、10日、15日の場合
    期間満了日から5日以内に予定納付、翌月1日から10日以内に申告納付し、前月の納付税額を精算。付

(5)消費税

消費税は特殊消費品、奢侈品、 生活必需品以外の物品、高消耗高級品、再生代替不能の石油消費品等を課税消費品(限定列挙)として、課税消費品の生産、委託加工、輸入に課税する。消費税は内税であり、生産者、委託加工者、輸入者が税負担し物品の原価を構成するものと理解されている。ただし、会計処理は売上高の控除項目として表示され、納付すべき消費税は未払税金の内訳科目として未払消費税を計上する。一つの課税行為について増値税と営業税が同時に課税されることはないが、消費税は増値税、営業税とともに課税されることがある。

①納税義務者

中国国内で課税消費品を生産、委託加工、輸入を行う者。

②税目と税率
  • 項目 税率
    (イ) 煙草
    甲類紙巻煙草(各種輸入紙巻煙草を含む) 45%
    乙類紙巻煙草 40%
    葉巻煙草 40%
    刻み煙草 30%
    (ロ) 酒及びアルコール
    穀物白酒 25%
    薯類白酒 15%
    黄酒(課税単位:トン) 240元
    ビール(課税単位:トン) 220元
    その他酒類 10%
    アルコール 5%
    (ハ) 化粧品(セットの化粧品含む) 30%
    (ニ) 皮膚・頭髪保護用品 17%
    (ホ) 貴金属品(各種金、銀、装飾品及び宝石を含む) 10%
    (ヘ) 爆竹、花火 15%
    (ト) ガソリン(課税単位:リットル) 0.2元
    (チ) 重油(課税単位:リットル) 0.1元
    (リ) 車両用タイヤ 10%
    (ヌ) オートバイ 10%
    (ル) 小型車両
    小型乗用車 排気量2,200cc以上 8%
    1,000cc以上2,200cc未満 5%
    1,000cc未満 3%
    ジープ(4輪駆動) 排気量2,400cc 以上 5%
    2,400cc未満 3%
    マイクロバス(22座席以下) 排気量2,000cc以上 5%
    2,000cc未満 3%
    ③免税項目

    納税者が輸出する課税消費品

    ④税額の計算
    1. 従価税率方式の場合
      売上高×税率
    2. 従量税額方式の場合
      販売数量×税率
    3. 自己生産自己使用の課税消費品
      納税者が生産する同一種類の課税消費品の販売価格
      販売価格がない場合
      課税標準構成価格=(原価+利益)÷(1-税率)
    4. 委託加工の課税消費品
      受託者の同種類の消費品の販売価格
      販売価格がない場合
      課税標準構成価格=(材料原価+加工費)÷(1-税率)
    5. 輸入の課税消費品
      課税標準構成価格=(関税課税価格+関税)÷(1-税率)
    ⑤輸出品の免税

    納税者が課税消費品を輸出する場合は、消費税を免除とする。輸出する課税消費品の免税方法は、国家税務総局がこれを定める。

    ⑥納付期限(納付税額により税務機関が決定)
    • 課税対象期間が1カ月の場合
      期間満了日から10日以内に申告納付
    • 課税対象期間が1日、3日、10日、15日の場合
      期間満了日から5日以内に予定納付、翌月1日から10日以内に申告納付し、前月の納付税額を精算。
    • 課税消費品輸入の場合
      税関が税額納付証を発行した日から7日以内に納付。

    (担当 伊東 晴俊)

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